中生代の古鳥類は地上性であることについての新しいアプローチ

 今日はバイクでどこかに出かける予定だったのですが、天気が悪かったため、自宅でScienceDailyを流し読みしていました。その過程で興味深い論文を発見したので自分用のメモをかねての記事作成です。
Earliest Birds Acted More Like Turkeys Than Common Cuckoos(ScienceDailyの元記事)
 ScienceDailyの元記事は上記URLなのですが、記事の内容が微妙にピント外れのような気がするので、論文のアブストラクトを直接訳してみました。

中生代の鳥類および非鳥類型獣脚類の採餌方法
Foraging modes of Mesozoic birds and non-avian theropods
Christopher L. Glen and Michael B. Bennett
鳥類の起源と初期進化は進化生物学上の大きなトピックである。20世紀において、進化史のシナリオでは、地表性の鳥の先祖と樹上居住性の鳥の先祖の二者が提案されていた。これは誤った2分法であると考えられる。後肢の機能を考慮に入れた場合、多くの現生鳥類が、地上と樹上の移動者というあいまいな分類にあることが問題の一部であると我々は示唆する。実際のところ、これらは互いに排他的な二者択一型の手段というわけではない。多くの現生鳥類は異なった度合いで地上~樹上の性質を示す。よって、我々は2分法よりも、現生鳥類と彼らの示す地上または樹上(あるいはその両方)の採餌行動に照らし合わせた連続体の上に配置することを提案する。この手法をテストするために、我々は完新世鳥類249種における爪先の鉤爪を分析し、樹上の採餌行動がより支配的になることに伴い鉤爪の湾曲が増加することを明確にした。 改良された鉤爪の形状測定基準は、後者の性質を表すため、現生鳥類と絶滅した鳥類との直接の比較をより多く許容する。先人の研究の対照によると、中生代の鳥類、およびそれと密接な関係のある非鳥類型獣脚類(non-avian theropod)の爪の弯曲率は、完新世の樹上性鳥類とは明らかに異なっており、それよりも「地上で採餌する(ground-foraging)」鳥類に近いことを我々は発見した。
原文(内容梗概)
(筆者による訳出:強調部分は筆者によるもの)

 Current Biologyの2007年11月7日号に掲載された論文です。
 爪の曲率で地上性、樹上性を推定するというアプローチは、少なくとも1984年のオストロムの論文の時点ですでに存在していたわけで、「地上で採餌したと思われる」結論も最初の論文に沿ったものなので、一体何をいまさらと思われる方もいるかもしれません。
 しかし、今回の論文の新しい点は「採餌行動」を最も重要な習性と考え、「地上、樹上の主にどちらで餌をとるか」という行動様式と爪の曲率を関連付けた点です。私たちが目にすることができる現生の鳥類には、はっきり地上性とも樹上性とも言い切れないあいまいな生態のものも存在しますが、そういう鳥類もデータとして有効になるわけで、理論的には従来より精度の高い結果が得られるわけです。
 その結果、どうも非鳥類型獣脚類および初期鳥類は地上で採餌する鳥類と似た傾向が見られたということですね。鳥類の初期進化を考える上で興味深い論文です。
Glen, C. L. & Bennett, M. B., 2007. Foraging modes of Mesozoic birds and non-avian theropods. Current Biology, Volume 17, Issue 21, 6 November 2007, Pages R911-R912